2017年4月1日土曜日

「人生フル-ツ」

 先日、シネマテ-クたかさきに「人生フル-ツ」という映画を見に行きました。
愛知県の高蔵寺ニュ-タウンに住む建築家、津端修一さん90歳、妻の英子さん87歳の老夫婦の日常を映したドキュメンタリ-映画です。

 1960年代、建築家の津端さんは自然との共生を目指し高蔵寺ニュ-タウンの計画を始めましたが、経済性、合理性を優先する時代に合わず、当初の理想は実現できませんでした。そこで津端さんはニュ-タウンの中に土地を購入し、家を建て、雑木林を育て始めたのです。
 夫婦で畑を耕し、果樹を手入れし、英子さんは収穫したたくさんの野菜や果物で日々の料理を作ります。何でも手作り、自分たちでできることは可能な限り自分たちの手で、質素だけれど豊かな暮らしを50年続けてきました。
 自宅は津端さんが尊敬するアントニン・レ-モンドの自邸に倣って設計、平屋ですが高窓から光を取り入れ、のびのびした居心地の良さそうな雰囲気が伝わってきます。
 修一さんは2015年のある日、畑で草取りをした後、ベッドで横になり、そのまま帰らぬ人となりました。英子さんは1人残されましたが、「自分でできることは自分でやる」という変わらぬ日々の暮らしをコツコツと続けていきます。

 この映画は東海テレビが制作、先日テレビでも放映されました。残念ながら高崎での上映は終わってしまいましたが、現在も全国あちこちの映画館で公開中、私が見に行った最終日は満員の人でした。
 日々の健やかな暮らしが人生という果実を育て、住まいも住む人と一緒に歳を取り味わいを深めていく。瑞々しい遊び心とゆっくり積み重なる時間が、美味しいフル-ツのような人生を作る。歳を取ることは美しい、と素直に思える素敵な映画でした。

映画のHPはこちらです→「人生フル-ツ」